梓川の家~ぬくもりに満ちた木の風合いと通り抜ける風が心地よい和の住処

2017 長野県 松本市

木造 2階建て

松本市郊外の冷涼で青々とした山を背負う敷地。「裏山の木や庭の木を使って家を建てたい」というご夫妻の夢を伺った時、「何と素敵な夢でしょう!」と心打たれました。
ヒノキ、ケヤキ、アカマツ、イチイの木。まずはどんな木をどれくらい使うのか、間取りを決めながら、使用する樹種や数量を決めていきました。切り出した木は、1年間の自然乾燥を経てようやく材料として納められます。とても贅沢です。2013年4月に設計がスタートし、設計期間2年半。出来上がったのが2017年5月。4年間という歳月と関わった人々の手間と知恵が詰まった愛着のある住まいとなりました。
外壁の土壁は、は周りの自然に馴染むような色合いとし、屋根の稜線は裏の山々と調和するように勾配や高さを決めました。さらにどの窓からも美しい山々の緑やリンゴ畑を望むことのできるピクチャーウインドウとなっています。
玄関に入ると32cm角のケヤキの大木が人々を迎え入れます。また、既存母屋にあったお父様の手彫りの欄間を絵のように設え、今では手に入らないガラスも建具に再利用しました。母屋の古いものはデザインという息吹をかけて新しく蘇りました。「思い入れがないと言ったら嘘になるけど、それよりも純粋に美しいし、このまま捨ててしまうにはしのびないじゃないですか」と語るご主人の言葉に、受け継がれていくものの本質を感じました。